【日時】
2014/5/1(木) 19:00~
【場所】
コロニーハウス
https://goo.gl/maps/SjJ9c
【担当】
みずき薬局 馬場
http://www.aiki-ph.co.jp/shop/mizuki/
【お題】
PPIやH2阻害薬を服用していたが胃カメラで改善が確認され薬が中止になった患者さんが、中止後不調を訴えた場合に、PPIやH2阻害薬を再開する事はどの程度効果があるのか?また薬剤師として中止時、再開時の服薬指導ではどのようなことに留意すべきか?
【簡単な病態】
〇GERD(Gastroesophageal Reflux Disease:胃食道逆流症)
→消化液の食道への逆流によって生じる症状・徴候の総称
→胸焼け、呑酸、喉の炎症、胸部の痛み等の症状がでる
合併症:貧血、出血、食道狭窄、Barrett食道、食道腺がん、など
〇NERD(non-erosive reflux disease:非びらん性胃食道逆流症)
→胸焼け等の症状があるうち、胃カメラで胃、食道粘膜の病変が認められないもの
→病的な酸の逆流、病的ではない酸の逆流、酸への過敏性、酸以外の逆流等がある
GERDの治療目的:症状のコントロール、QOLの改善、合併症の予防
薬物治療:PPI,H2阻害薬が第一選択
〇FD(functional dyspepsia:機能性ディスペプシア)
→器質的な異常がない(組織傷害がない)にもかかわらず、胃の痛みや胃もたれなどのさまざまな症状が慢性的に続いている病状
・食後愁訴症候群(PDS:Postprandial Distress Syndrome)
→食後のもたれ感、早期飽満感
・心窩部痛症候群(EPS:epigastric pain syndrome)
→心窩部痛、心窩部灼熱感(胸部の症状ではない)
【読んだ論文】
Efficacy of omeprazole, famotidine, mosapride and teprenone in patients with upper gastrointestinal symptoms: an omeprazole-controlled randomized study (J-FOCUS).
BMC Gastroenterol. 2012 May 1;12:42.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22548767
P:ピロリ菌陰性で上部消化器症状を持つ患者に対して
I:オメプラゾールで治療をすることは
C:他の治療(ファモチジン、モサプリド、テプレレノン)に比べて
O:GOS(自覚症状の指標)を改善させるか?
T:治療、オープンラベルのランダム化比較試験
【患者】
<組入>
20歳以上
8症状のうち1つは当てはまり、そのGOSスコアが4以上
1.心窩部痛 2.胸焼け 3.逆流 4.食後の膨満感
5.吐き気/嘔吐 6.げっぷ 7.早期満腹感 8.膨満感
<除外>
ピロリ菌陽性とピロリ菌除菌経験者
3ヶ月以内に内視鏡検査を行った患者も除外
1週間前から消化器系に影響の出る薬は中止
【割付・解析】
471名を対象とし、
オメプラゾール10mg 1日1回
ファモチジン10mg 1日2回
モサプリド5mg 1日3回
テプレレノン50mg 1日3回
を2:2:2:1になるようにランダム割付を行った。
脱落者は合計38名、追跡率91.9%
75%以上服用した割合は、96%、91%、84%、87%だった。
安全性は、ITT(intention to treat)で解析を行った。
有効性は、FAS(Full Analysis Set)で解析を行った。
χ2検定で有意差判定を行い、多変量ロジスティック回帰分析で有効性の背景を検討した。
【Outcome】
<primary endpoint>
4週間経過後に8症状のGOS≦2の割合を比較
オメプラゾール群 66.9%
ファモチジン群 41.0%
モサプリド群 36.3%
テプレレノン群 32.3%
<secondry endpoint>
2週後、4週後にGOS=1まで改善した割合を比較
<結果に影響を与える因子>
・5つ以上の症状を訴えると改善が悪い傾向 OR=0.48 (0.29–0.81)
・severe以上(GOS≧5)だと改善が悪い傾向 OR=0.65 (0.39–1.08)
・全体と比べGERDタイプ、FDタイプは改善が良い傾向
GERDタイプOR=1.23 (0.78–2.0)、FDタイプOR=1.67 (1.01–2.8)
・女性の方が改善が少し悪い傾向 OR=0.80 (0.49–1.32)
【ディスカッション】
・ACGのガイドライン(http://gi.org/guideline/management-of-dyspepsia/)では、
55歳以上は胃カメラ推奨。
55歳未満でピロリ菌陽性の場合は除菌、陰性の場合はPPI服用
胃カメラを行っても兆候が見られない患者をFunction Dyspepsiaとして分類
・お題の患者さんは胃炎や逆流性食道炎による治療で薬を服用していることが多いのに対し、
論文のPは上部消化器症状全般と対象が広い。
・お題の場合だと、器質的に異常がなくなって中止になっているので、
不調を訴える場合はNERDの人が多いだろうか?
・症状が重い人や訴える症状が多い人の改善が悪いのは、単剤治療だから?
複数併用したほうが改善する?
・オープンラベルだけど、どの程度割り引いて考えればよいのか?
・3回飲む薬で改善度が悪いのは、単剤で効果が弱い事もあるが3回飲めないからもある?
・FDタイプでもPPIに反応するのはなんで?
・2週よりも4週で改善度が上がっているので継続服用したほうが改善しやすい?
・オメプラゾールだと最近S体のネキシウムが処方されているが、どの程度効果が違うんだろう。
【お題に対するロールプレイングから普段の交付時に活かせそうなこと】
<胃の薬中止時、胃カメラ実施前>
・NERD、FD等器質的に異常がなくても症状が出る病態があるので、
中止後も症状出る場合は再度受診するように指導しても良いかもしれない
・症状が重いと改善が悪いようなので、悪化時は我慢せずに早めに薬を再開したほうが良い?
<薬再開時>
・自覚症状の改善にPPIなどを使用することが有用であることを伝える
・状態が改善しない場合は、その旨をDrへ伝え他の薬への変更や追加を相談するよう指導する
・しばらく続けたほうが症状が改善しやすいようなので、
薬服用して1-2週間で改善しなくてもしばらくは継続してみるよう指導する
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